キャリア研修とは?実施するメリットや注意点、設計手順を解説
2022年8月24日(水)
2023年8月5日(土)
従業員にキャリアビジョンを考えてもらう取り組みとして普及している「キャリア研修」について解説します。自律的に働き、会社に貢献する社員を育成するためには、社員に自己理解を深めてもらうことが重要です。適切にキャリア研修を実施することで、チームビルディングやモチベーション向上、定着率の向上にもつながります。管理職研修としてキャリア研修を行う会社も少なくありません。
この記事では、キャリア研修の必要性や、目標設定について解説します。また、実践方法をステップに分けて解説しますので、自律型人材を育成する手法について知りたい方はぜひ参考にしてください。
キャリア研修とは
キャリア研修とは、理想とする将来の自分や働き方を実現させるためのスキルやプロセスなどを学ぶための研修のことです。手法を学ぶだけにとどまらず、参加者が自分のキャリアプランを作るところまで行うことも多くあります。
社員が自身のキャリアの棚卸しをしながら行う点が特徴です。「キャリアデザイン研修」とも呼ばれています。キャリアには職務上の経験や経歴、職業のほかに生き方や働き方といった意味も込められています。OJTやメンタルヘルス研修、コミュニケーション研修などと同様に、新入社員研修・中堅社員研修として一般的に行われている施策の1つです。
キャリア研修の目的
キャリア研修の目的は、受講者の年代や役職に応じて変わります。キャリア研修の目的を以下の3つの階層に分けて解説します。
- 若手社員の場合
- 中堅社員の場合
- シニア社員や管理職の場合
では、それぞれについて見ていきましょう。
目的|若手社員
若手社員を対象としたキャリア研修は、自身のキャリア形成の方向性を確認し、必要なスキルや経験を具体的に抽出することを目的としています。若手社員はまだ社歴が浅いことから、キャリア開発の重要性に気づいていないケースが多くあります。そのため、ビジネスパーソンとしての基本的なスキルを習得させて成長する機会を与えることと、キャリア開発の重要性を理解させることが重要です。
目的|中堅社員
中堅社員の場合は、自分が理想とする上司・リーダー像をイメージし、部下の育成に必要な能力を学ぶキャリア研修を行うのが一般的です。プレイヤーとして中心的な存在となる年代であると同時に、将来の管理職やマネージャーとして活躍が期待される世代が多くいます。そのため、将来のリーダーとなっていくことを見据えたキャリアデザインが必要となってきます。マネジメント研修やリーダーシップ研修を実施するのも効果的です。
さらに結婚や子育てなど私生活でも変化が生まれやすい時期でもあり、仕事だけでなくワークライフバランスなど人生全体の設計も意識させる必要があります。
目的|シニア社員・管理職
会社の中心として活躍してきた世代であるシニア社員や管理職の場合は、管理職となる中堅社員への経験の伝え方を考えるキャリア研修が実施されます。世代交代の準備を始めつつ、リーダーからフォロワーに意識を転換させる必要もあります。ただしいわゆる「たそがれ研修」と受け取られないよう、前向きにがんばろうというメッセージを発することが大切です。
「人生100年時代」を見据えて、ポストオフや定年後の働き方・セカンドキャリアに関する考え方についても知る必要があります。とくに働き方改革により、高齢者の労働力は今後ますます重要となっていきます。再雇用なのか退職なのかなど、定年後にどう仕事に関わっていくか考えることもシニア向け研修の目的の1つです。
キャリア研修の基本的な流れ
キャリア研修の構成は、大まかに次のような流れになっていることが一般的です。
- キャリア・スキルの棚卸をする
- 自己分析する
- 希望する将来像を言語化する
- 実現させるプロセスを考える
- 定期的に振り返りを行う
なお最後の振り返りは研修後に行うものですが、研修の結果を具体化するために必要です。フォローという意味では、研修の一部と言っても差し支えないでしょう。それぞれについて見ていきます。
STEP1:キャリア・スキルの棚卸をする
まず初めに、これまでのキャリアとスキルの棚卸を行います。どのような経験を積んできたのか改めて意識することで、その延長にある今の自分を理解します。
なお棚卸の目的は適切なキャリアデザインを行うためであって、評価などとは無関係です。そのため仮に好ましい経験ばかりでなかったとしても、虚偽のないように事実だけを再確認することが大切です。
STEP2:自己分析する
棚卸した経験をもとに、自分の強みや弱点、仕事に対する価値観などを自己分析します。ここまでが現在の自分を認識することに当たり、将来のプランを考えるためのスタートとなる重要な作業です。
客観的に自己分析すれば、自覚していなかったことを発見できるかもしれません。また分析はあくまで事実に基づいて客観的に行うよう、先に意識づけすることが大切です。棚卸と同様に、事実からかけ離れた取り繕った分析はキャリアデザインに無意味だからです。
STEP3:希望する将来像を言語化する
次に、自分が望む将来像を言語化します。将来どうなりたいか、どのような方向にキャリアを進めていきたいかを考えていきます。このとき過去や現在は考慮する必要はなく、これまでのキャリアとつながりがなくても構いません。自分の本心として望んでいる将来像を明らかにしてもらいます。
できるだけ、長期と短期とに分けて考えます。最終的にどうなりたいかをイメージしてもらい、それを細分化して1年後・3年後・5年後など細かいゴールに分けていきます。
STEP4:実現させるプロセスを考える
現状の理解と将来の希望の明確化ができたら、希望を実現させるプロセスを考えていきます。現状と将来像の間をどのようにして埋めていくか、どのような手順で現在の立ち位置から理想像まで近づいていくかを検討します。
プロセスがはっきりしたら、そのプロセスを実行していくためにどのようなスキルや経験が必要か、おのずと明らかになっていくでしょう。より具体的にどう行動すべきかが定まっていきます。あとは上司とすり合わせを行い、実行していくことになります。こうして完成させたプロセス、キャリアデザインは、毎年の目標設定や評価制度と連動させると一貫性が生まれます。
STEP5:定期的に振り返りを行う
研修で決めたプロセスを実行していく中で、定期的に振り返りを行います。一般的には評価制度と連動させて、年度末などのタイミングで人事評価の面談の中で行うことが多いでしょう。
進捗や達成度を確認し、未達の場合は何が問題だったのか、目標を見直す必要はないかなどを把握します。上司はフィードバックやアドバイスを与えましょう。さらに必要な場合は計画のペースを調整したり、事情の変化によっては目標自体を変更したりします。
年代別プログラムの例
次に、キャリア研修のプログラム例について紹介します。ここでも年代別に、以下の3つに分けて解説します。
- 若手社員
- 中堅社員
- シニア社員・管理職
各年代の研修の目的はすでにまとめた通りですが、自社の状況によって目的が多少変わるかもしれません。自社の目的達成のために最適な内容で実施することが望ましいと言えます。ここに挙げるのは一例として参考にしてみてください。
では順に見ていきましょう。
プログラム例|若手社員
若手社員向けのプログラムの例としては、以下のような内容があります。
- キャリアとは何かの理解
- 主体的なキャリア意識づくり
- キャリアデザインの具体的な方法
まずキャリアデザインを行う前提として、キャリアとキャリアデザインの重要性の理解を行います。また将来の計画を立てていく際、「Must(やるべきこと・求められること)」「Can(できること・スキル)」「Will(やりたいこと)」の3つの視点から考える手法がよく用いられます。若手向けの研修では、その手法について解説することが比較的多くあります。
プログラム例|中堅社員
中堅社員向けのキャリア研修のプログラム例としては、次のような内容が挙げられます。
- キャリアとは何か再確認
- 過去の振り返りと自己分析
- ワークライフバランス
- 変化への対応力
キャリア研修の王道とも言える内容かもしれません。中堅社員は一定の経験を積んできていながらも、それと同時にこれからも長く働いていく時期にあります。過去と将来の真ん中にいるとも言えるため、中堅社員向けの研修は両者についての認識を深める内容で行われます。
また将来のリーダーとして、環境の変化に対応しながらキャリアを作ることについてもよく学ばれています。
プログラム例|シニア社員・管理職
シニア社員・管理職向けのキャリア研修のプログラム例をまとめます。次のような内容があります。
- シニア社員として会社にどう貢献していくか
- 役割転換後の心構え
- 定年後のキャリア・生活を考える
リーダーとして会社を牽引してきたシニア社員も、世代交代のため役割が変わるタイミングがあります。その際にさまざまな世代とどのような心構えで協働していくかを学びます。
また定年後の生活について、仕事はもちろん私生活や健康などを含めてどうしていくか判断するための知識などを習得する内容も多く実施されています。ただし定年したら不要になると誤解されないよう、前向きに伝えることが大切です。
キャリア研修のメリット
キャリア研修を行うことによって得られるメリットについて確認しておきましょう。以下のような点が挙げられます。
- モチベーション・雰囲気の向上
- 社員のスキル向上
- 離職の予防
1つずつ見ていきましょう。
メリット|モチベーション・雰囲気の向上
キャリア研修による代表的なメリットとして、対象社員のモチベーション向上につながる点が挙げられます。キャリア研修によって自分のキャリアの実現に必要なスキルやプロセスが明確になるためです。仕事に対するモチベーションが向上し、企業やチームに良い影響を与えることが期待できます。具体的には、業務効率や生産性の向上、良好な人間関係や一体感の醸成、売上や成果のアップなどにつながります。
主体性のある人材を育成しやすくなる点もメリットです。これは、キャリアの方向性が明確になり、不足しているスキルや経験を自発的に習得しようとする意識が生まれるためです。研修を終えた社員は仕事でも自ら課題や目標を設定して自発的に行動するようになるため、人材管理の負担を軽減できます。一律の集合研修でキャリア開発を促すことができ、効率的な人材育成を実現できるのもメリットです。また自発的な社員が増えることで全体のプロ意識が高まります。そういった点からも職場の一体感や雰囲気が向上します。
メリット|社員のスキル向上
キャリア研修により個々の社員の目標が明確になると、社員全体のスキルが向上することにつながります。目標達成に必要となるスキルが明らかになるため、社員が高いモチベーションを持ちながらスキルを習得するからです。
強制しなくても、自発的に自分の目標達成のために学習する社員が増えます。また経験を積むことにも貪欲になり、意欲的に業務に取り組むようにもなるでしょう。業務の成果が上がることに加えて、クオリティの高い作業を行うスキルも身に付いていきます。
メリット|離職の予防
またキャリア研修で将来的な展望が明確になることにより、離職の予防につながることも期待できます。社員が会社に残って目標を実現しようとするからです。
離職の原因にはいろいろありますが、「将来性を感じられない」「自分の能力や資格が生かせない」はよく挙げられる理由の1つです。しかし自分の希望をもとにしつつ会社とすり合わせしてキャリアデザインを作っていれば、気持ちがブレることは少なくなります。自分の希望が会社の中で実現できるとわかっているからです。
ただし労働条件や人間関係などほかの要因で離職に至る可能性があります。待遇や社内の雰囲気なども改善する努力をしておきましょう。
キャリア研修を実施する際のポイント
次に、キャリア研修を実施する際にポイントとなる事項を解説します。具体的には次の点が挙げられます。
- 社員主体の内容にする
- 属性に応じたサポートを行う
- 相談窓口を用意する
- 必要に応じて人事制度を改革する
キャリア研修を成功させるためには上記のポイントを守ることが大切です。1つずつ見ていきましょう。
ポイント|社員主体の内容にする
キャリア研修では、あくまで社員主体の研修プログラムを用意する必要があります。会社が「社員にどうなってほしいか」ではなく、社員たちが「自分がどうなりたいか」を考えられる研修にすることが大切です。会社側の理想像を社員に押し付けると、モチベーションの向上や人材育成につながらない可能性があります。
ただし、社員主体を基本としつつも希望する内容によっては調整が必要です。会社には中長期的な方針や企業としての方向性などがあるでしょう。希望の内容によっては、現状では実現が難しいことがあるかもしれません。その場合は、会社の方向性とすり合わせを行ったり両者の交差する点を探ったりしましょう。前向きに対応すれば、会社にとっても新機軸の確立や多角化のチャンスになります。
ポイント|属性に応じたサポートを行う
社員の属性や役職に応じたサポートを行うこともポイントです。新入社員とシニア社員、マネージャーと一般社員、営業職と研究職では、当然ながらそれぞれのポジションに合わせたサポートが必要です。随時あるいは常時行うことが難しい場合は、可能な方法を検討しましょう。たとえば定期的にヒアリングや面談を行うなどの施策が考えられます。
社員の属性や役職が異なれば、理想とするキャリアや必要なスキル、価値観なども変わるため、柔軟に研修内容・実施方法を変えていくことが求められます。年代別の目的やプログラムはすでに述べた通りです。一般的な例を参考にしながら、自社の状況に合わせて最適な内容で研修を行いましょう。
ポイント|相談窓口を用意する
サポートの一環とも言えますが、相談窓口を設けることも重要です。継続的にキャリアについて考えてもらうには、気軽にキャリアに関する相談ができる窓口を設けるのが効果的と言えます。問い合わせ窓口には、キャリアコンサルタントの資格を持つ専門家を配置すると良いでしょう。
随時相談を受け付けるのが現実的に難しい場合は、ほかの方法で対応しましょう。たとえばメンター制度やブラザー・シスター制度を導入する企業も多くなってきています。これらの制度を導入する場合は、メンターやブラザーシスターとなる社員の負担を考慮したり適切な対応ができるよう教育することなどが必要となります。注意しましょう。
ポイント|必要に応じて人事制度を改革する
社員が理想とするキャリアを実現するには、人事異動が必要になるケースもあるため、人事制度の改革も検討しましょう。自己申告制度や社内公募制度、社内FA制度などを導入し、柔軟な人事異動が可能なシステムにすることでキャリアの選択肢が広がります。
人事制度を運用していくためには、タレントマネジメントなどのツールが必要となる場合やあった方が効果的な場合もあります。管理する側からすると業務が増える可能性があるので、無理なく運用できる体制を整えましょう。
キャリア研修の設計手順
自社に合ったキャリア研修を行おうという場合、次の手順で研修の設計を行います。
- 受講者を選定する
- 受講者ごとの課題とゴールを明らかにする
- 研修プログラムを策定する
- 効果測定の方法を検討する
- 研修を実施する
それぞれの手順について見ていきましょう。
STEP1:受講者を選定する
まず、受講者を選定します。すべての社員に対して一気にキャリア研修を実施するのは難しいため、役職や年齢、属性などの区分に応じて優先順位をつけることが重要です。人事戦略や人材育成計画などを考慮して選ぶ必要があります。あるいは、たとえば「新人の間でモチベーションが低下している傾向がある」といった社内の課題があるかもしれません。そういった点も考慮して優先順位を決めましょう。
ただしキャリア研修は一度しかできないものではありません。属性ごとに順々に行っていくことが可能なので、あくまで先に研修を行う近々の対象を選定するということです。
STEP2:受講者ごとの課題とゴールを明らかにする
続いて、受講者の性質に応じた課題を抽出し、研修の目的(ゴール)を設定します。課題とゴールの例として、自身のキャリアに関する明確なイメージを持ってもらうことや、定年後のセカンドキャリアを考えるきっかけにすることなどが挙げられます。受講者が主体となって考えることが大切です。
なおここで言う課題・ゴールは、1人ひとりの社員の解決すべき問題や目標となるゴールという意味ではありません。受講者となる集団に共通する課題、全員に到達してもらいたい状態や理解してもらいたい事項ということです。それに対して個々が自分に当てはめつつ主体的に取り組むということを意味しています。
STEP3:研修プログラムを策定する
続いて、研修プログラムを策定します。研修の目的に沿ったプログラムを作成することが重要です。STEP2で明らかにした受講者の属性や自社の課題などをスタートとし、同じく設定したゴールとのギャップをどのように埋めるか、つなげるかを考えて内容を決めましょう。また同じ内容でも、講義・グループワークなどさまざまな形式が考えられます。あるいは集合研修・eラーニング・オンライン研修といった実施方法の違いもあります。形式や実施方法も同時に検討・決定します。
さらに必要に応じて、スケジュールの確保や講師、場所の選定なども同時に行います。自社ですべてを用意するのが難しい場合は、研修の専門会社に相談するのがおすすめです。
STEP4:効果測定の方法を検討する
次に、効果測定の方法を検討します。キャリア研修が現場でどう活用され、どのような成果につながっているのかを確認するには、研修の実施後に効果測定を行うことが大切です。アンケートやキャリアプランニングシートを作成して、効果測定を行うのが一般的です。また設計したスケジュール通りにキャリア作りが進んでいるか、中長期的な進捗も確認しましょう。最終的には、キャリア研修がキャリアデザインの実現に役立っているかどうかが大切です。
外部の研修会社を利用する場合も、研修後のアフターフォローまで対応可能な会社を選ぶと良いでしょう。アフターフォローを実施しているかどうか、研修会社のサービス内容に注目してください。
STEP5:研修を実施する
ここまでの準備が完了したら当日までに手配を行い、研修を実施しましょう。事前に課題を課す場合や予習が必要な場合は、テキストの配布や告知も間に合うように行っておきます。キャリア研修は数日間行うケースが多いため、業務に影響が出ないよう現場と連携する必要があります。
eラーニングを利用すると、業務の空いた時間に学習できるため効率的です。オンラインで提供されているため、職場以外の場所で実施できる点もメリットと言えます。オンラインの場合は、配信に使う機器の動作確認も兼ねてリハーサルしておくと安心です。
また研修後はSTEP4で検討した効果測定を実行しましょう。
「キャリア研修を実施して社員のキャリア構築を支援」
現在のビジネスにおいては、社員1人ひとりが主体的になって働くことが求められています。そのためには、会社の要求をこなすだけではなく、自身の明確なビジョンにもとづいて働く社員の育成が必要です。キャリア研修は、社員に自身のキャリアについて考える重要性を認識させるためのイベントとして、多くの会社で実施されています。
年代別・役職別のキャリア研修を内製化することが難しい場合は、外部の専門事業者の利用も検討しましょう。キャリア研修によるリーダー育成をご検討の際は、社員教育研究所の「組織力向上研修」をご利用ください。ロールプレイやグループディスカッションなどを通して、現代社会のリーダーに求められる知識や能力を習得できます。
「組織力向上研修」の詳細はこちら
この記事の監修者
株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。
自社に合ったキャリア研修を行おうという場合、次の手順で研修の設計を行います。
- 受講者を選定する
- 受講者ごとの課題とゴールを明らかにする
- 研修プログラムを策定する
- 効果測定の方法を検討する
- 研修を実施する
それぞれの手順について見ていきましょう。
STEP1:受講者を選定する
まず、受講者を選定します。すべての社員に対して一気にキャリア研修を実施するのは難しいため、役職や年齢、属性などの区分に応じて優先順位をつけることが重要です。人事戦略や人材育成計画などを考慮して選ぶ必要があります。あるいは、たとえば「新人の間でモチベーションが低下している傾向がある」といった社内の課題があるかもしれません。そういった点も考慮して優先順位を決めましょう。
ただしキャリア研修は一度しかできないものではありません。属性ごとに順々に行っていくことが可能なので、あくまで先に研修を行う近々の対象を選定するということです。
STEP2:受講者ごとの課題とゴールを明らかにする
続いて、受講者の性質に応じた課題を抽出し、研修の目的(ゴール)を設定します。課題とゴールの例として、自身のキャリアに関する明確なイメージを持ってもらうことや、定年後のセカンドキャリアを考えるきっかけにすることなどが挙げられます。受講者が主体となって考えることが大切です。
なおここで言う課題・ゴールは、1人ひとりの社員の解決すべき問題や目標となるゴールという意味ではありません。受講者となる集団に共通する課題、全員に到達してもらいたい状態や理解してもらいたい事項ということです。それに対して個々が自分に当てはめつつ主体的に取り組むということを意味しています。
STEP3:研修プログラムを策定する
続いて、研修プログラムを策定します。研修の目的に沿ったプログラムを作成することが重要です。STEP2で明らかにした受講者の属性や自社の課題などをスタートとし、同じく設定したゴールとのギャップをどのように埋めるか、つなげるかを考えて内容を決めましょう。また同じ内容でも、講義・グループワークなどさまざまな形式が考えられます。あるいは集合研修・eラーニング・オンライン研修といった実施方法の違いもあります。形式や実施方法も同時に検討・決定します。
さらに必要に応じて、スケジュールの確保や講師、場所の選定なども同時に行います。自社ですべてを用意するのが難しい場合は、研修の専門会社に相談するのがおすすめです。
STEP4:効果測定の方法を検討する
次に、効果測定の方法を検討します。キャリア研修が現場でどう活用され、どのような成果につながっているのかを確認するには、研修の実施後に効果測定を行うことが大切です。アンケートやキャリアプランニングシートを作成して、効果測定を行うのが一般的です。また設計したスケジュール通りにキャリア作りが進んでいるか、中長期的な進捗も確認しましょう。最終的には、キャリア研修がキャリアデザインの実現に役立っているかどうかが大切です。
外部の研修会社を利用する場合も、研修後のアフターフォローまで対応可能な会社を選ぶと良いでしょう。アフターフォローを実施しているかどうか、研修会社のサービス内容に注目してください。
STEP5:研修を実施する
ここまでの準備が完了したら当日までに手配を行い、研修を実施しましょう。事前に課題を課す場合や予習が必要な場合は、テキストの配布や告知も間に合うように行っておきます。キャリア研修は数日間行うケースが多いため、業務に影響が出ないよう現場と連携する必要があります。
eラーニングを利用すると、業務の空いた時間に学習できるため効率的です。オンラインで提供されているため、職場以外の場所で実施できる点もメリットと言えます。オンラインの場合は、配信に使う機器の動作確認も兼ねてリハーサルしておくと安心です。
また研修後はSTEP4で検討した効果測定を実行しましょう。
現在のビジネスにおいては、社員1人ひとりが主体的になって働くことが求められています。そのためには、会社の要求をこなすだけではなく、自身の明確なビジョンにもとづいて働く社員の育成が必要です。キャリア研修は、社員に自身のキャリアについて考える重要性を認識させるためのイベントとして、多くの会社で実施されています。
年代別・役職別のキャリア研修を内製化することが難しい場合は、外部の専門事業者の利用も検討しましょう。キャリア研修によるリーダー育成をご検討の際は、社員教育研究所の「組織力向上研修」をご利用ください。ロールプレイやグループディスカッションなどを通して、現代社会のリーダーに求められる知識や能力を習得できます。
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株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。