厳しい新人研修は何のためにする?人材育成を成功させるための注意点

2022年10月31日(月)

2023年12月26日(火)

厳しい新人研修は何のためにする?人材育成を成功させるための注意点

企業では、意図的に新人研修を厳しくすることがあります。どういったメリットがあって研修を厳しくするのでしょうか。また、現代において厳しい研修を実施することにリスクなどはないのでしょうか。

この記事では、あえて新人研修を厳しくする理由について解説します。また、厳しい研修にともなうリスクや実施するうえでの注意点についても紹介します。具体的には、以下のような内容です。

  • 厳しい新人研修は、主に早い段階で社会人としての自覚を持ってもらうために行われる
  • 厳しい研修には、ストレス耐性が付く、社員間の連帯感が生まれるなどのメリットがある
  • ただし脱落者が出たり会社の評判を下げたりするリスクもあり、時代にそぐわなくなりつつある
  • リスクを避けるため人格否定をしないなどメンタル面に配慮をしつつ、成長を促すことを主眼に行うことが大切

効果的な新人研修を実施したい管理職の方はぜひ参考にしてください。

なぜ厳しい研修が行われているのか?

厳しい研修の目的

研修の目的は人材育成にあります。厳しく研修を行うのは、育成の効果を上げるためです。決して部下を精神的に追いつめることが目的ではありません。厳しい研修を経験させることで、ビジネスで実際に厳しい場面に直面しても折れないマインドセットや考え方を養います。

新人研修やマナー研修で厳しい研修が行われるのは、入社したばかりの新入社員に早い段階で社会人としての自覚を持ってもらうためです。厳しい研修を通して今後社会に出てからの厳しさに耐えられるようにします。

厳しい研修の効果

厳しい研修を耐え抜くことで、自信が付いて仕事に前向きになれるようになります。仕事では、さまざまなストレスに直面することが日常茶飯事です。あらかじめ厳しい研修をクリアしておくことでストレス耐性がつき、最後まで現場での仕事をやり遂げられるようになるでしょう。

また、社員同士の関係性にも好影響が期待できます。厳しい研修を乗り切った参加者同士で連帯感が生まれます。実際の業務でも、連帯感を持って取り組んでくれるでしょう。

参加者が研修を厳しいと感じる理由

参加者が研修を厳しいと感じるのは、主に学生時代とのギャップを感じることが理由です。学生時代に厳しい指導を受けなかった参加者は、厳しい雰囲気に慣れていない可能性があります。

また、研修期間で習得しなければならない知識やスキルの多さにも理由があります。なるべく早く会社で戦力となるため、研修期間で多くのことを覚えなければなりません。指導される内容は名刺交換や電話応対などのビジネスマナーや、配属されたときに必要となるビジネススキルやビジネスマインドなど基本的なことばかりです。しかしやることが多いように感じて、覚えることに負担感を持つ参加者もいます。

厳しい研修を行うリスク

研修に付いていけない参加者が出てくる

過度に厳しい研修を行うと、付いていけない参加者が出てくる可能性があります。最悪の場合は、参加者が脱落してしまうかもしれません。厳しい研修を受けたことで仕事が嫌になることが主な理由です。

入社前には夢や目標を持っていたとしても、厳しい研修のせいで入社後の前向きなイメージを描けなくなり社会人生活への希望や自信を失うケースもあります。とくに入社直後に「落ちこぼれ」と評価されてしまうと、その会社で働き続けるモチベーションはきわめて低くなるでしょう。仕事への意欲が極端に低下すると、参加者が退職を決める場合もあります。

会社の評判が下がる

厳しい研修を行うと、会社の評判を下げてしまう可能性もあります。

厳しい研修には上記のような目的と意義がありますが、厳しさを間違えるとパワーハラスメントなどのコンプライアンス違反につながってしまいます。厳しい研修を強要する会社へ、参加者が不信感を抱くかもしれません。「パワハラを受けた」と感じた参加者から訴訟を起こされるリスクも考えられます。

また、参加者がSNSに投稿した内容で、会社が炎上するリスクがあります。炎上がきっかけで社外に自社に関する良くない評判が広がってしまうかもしれません。参加者の書き方によっては、ブラック企業というイメージが広がってしまう可能性もあります。翌年以降の入社希望に影響するため、こうした事態はなるべく防がなければなりません。

厳しい研修をする際の注意点

参加者の人格を否定しない

まず、教える側は参加者の人格を否定しないように気をつけることが必要です。

指導目的であったとしても、参加者の人格を否定することはNGです。指導は人格や能力・価値観に対してではなく、改善すべき行動や事実に対して行います。研修の参加者は個性を持った人間であることを理解しましょう。

人格を否定された参加者は悔しさからモチベーションを上げることもありますが、多くの場合、意欲を失い怒りや悲しみの感情を抱きます。業務や入社後の人間関係に対して、ポジティブなイメージを持てなくなってしまうかもしれません。

指導は、参加者の人格を尊重したうえで行いましょう。研修中に参加者の問題点を指摘するようなシーンでは、「そんなこともできないのか」「学生のときに何を学んできたんだ」といった発言は控えてください。大声を出すことも控えましょう。代わりに、問題点を具体的に指摘し、参加者が成長できるように導くのがおすすめです。

厳しさだけを感じさせる研修内容にしない

厳しい研修は上記のような効果がありますが、現在では時代に合わなくなってきていることも事実です。特に若い世代は、厳しい指導に慣れていません。参加者が理不尽だと感じると、脱落者が出る、企業の評判が落ちるなど、リスクのほうが目立ちます。

効果的な研修を実現するためには厳しいなかにも誠実さが必要です。仕事の厳しさは実務を通して学べるケースも多いため、研修では厳しさだけを感じさせないような工夫が必要です。

「研修を厳しくすること」が目的ではないことを理解しておきましょう。仕事の厳しさを教えつつも、参加者がしっかりと成長できるような研修を設計することが大切です。苦痛ばかりで成長できなければ洗脳や無駄な義務も同然で、くだらない、つまらないと思われても仕方ありません。適宜フィードバックをする、受講者の意見を汲み上げる、といった工夫を取り入れましょう。

研修参加者のメンタルを追いつめない

研修中は、常に参加者のメンタルに気を配りましょう。

参加者は、新しい環境への不安と緊張を抱いています。研修担当者は、その不安と緊張を和らげるようにメンタルをケアしてください。「負荷をかけることで、成長してもらいたい」という研修の意義を、参加者に理解させることも大切です。

離脱者が出ないように努める必要もあります。研修中は、参加者に寄り添った指導を心がけてください。参加者からの相談には、丁寧に応じるようにしましょう。

参加者の様子を観察し、理解度に遅れがある参加者に対しては積極的にフォローすることも大切です。一人ひとり理解度には差があります。そして疑問をすぐに質問できる参加者ばかりではありません。困っている参加者を置いていかないのは大事なことです。

また、厳しい研修を参加者が乗り切れるようにするためには、参加者同士が協力できる体制にすることも求められます。研修中に参加者同士が交流できる場をセッティングしてください。参加者が協力し合える関係を築けるようにすると、困っている参加者が研修の悩みを相談できます。「ペーパータワー」のような、協力し合うアイスブレイクを取り入れるのも効果的です。リフレッシュになるだけでなく、チームワークの学びやチームビルディングのきっかけにもなります。

参加者が一丸となって研修を乗り越えられる空気を醸成すれば、入社後も業務に協力して臨んでくれるかもしれません。具体的には、担当者が離席して参加者だけで話せる場所や時間を設ける、ランチの時間を参加者一緒にとってもらう、といった取り組みが有効です。

「厳しい研修は計画的に実施しよう」

厳しい研修は新入社員にビジネス面で折れない心を持ってもらうために有効です。ただし、コンプライアンスや炎上リスクの点から、時代に合わなくなっています。リスクを排除するためには、狙いを明確にして計画的に実施することがポイントとなります。

参加者のメンタルを追いつめるような指導は厳禁です。また、スキルや知識面で参加者が成長できる設計にしましょう。そのことを参加者に共有し、研修の意義をしっかりと理解してもらうことも重要です。



この記事の監修者

株式会社 社員教育研究所 編集部

株式会社社員教育研究所 編集部

1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。

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