サーバントリーダーとは?新しい管理職に求められる9つの特性
2022年3月3日(木)
近年になりよく耳にするようになってきた「サーバントリーダー」や「サーバントリーダーシップ」という言葉。部下を支援し、協力を得ながら業務を遂行する管理職の姿・考え方というのが概要ですが、従来のマネジメント、リーダーシップとどう違うのでしょうか? また、サーバントリーダーに求められる特性やサーバントリーダーを育成することによる企業におけるメリット、サーバントリーダーシップを学ぶ方法についても含め、導入事例の紹介、解説を行います。
サーバントリーダーとは?
サーバントリーダーの特徴
サーバントリーダーとは、奉仕者や使用人を意味する「Servant」をもじった、支援型リーダーシップ哲学のことです。1970年、哲学者のロバート・K・グリーンリーフ氏が提唱した実践哲学が基になっているリーダー像を指します。
特徴は、メンバーに奉仕することを基本にするという点にあります。部下の支援や育成に特化したリーダーシップスタイルのことで、部下の自主性や生産性、また積極性やパフォーマンスの向上などを図ります。従来、会社や組織で多く用いられてきた支配型リーダーシップとは異なる考え方であり、社会情勢・環境の変化に伴い近年注目を集めています。
サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップの違い
リーダーシップの方向性の違い
サーバントリーダーシップが前提とするのは「奉仕の精神」です。メンバーを支援しながら、チームを導きます。一方、支配型リーダーシップは指導者がメンバーを統率することでチームをまとめます。リーダーシップのスタイル、使い方に大きな違いがあることを抑えておきましょう。
意思決定の流れの違い
サーバントリーダーシップは、部下や現場から話を聞き、そこで得た声を判断材料としながら意思決定を行います。いわば、ボトムアップ型の進め方です。一方、支配型リーダーシップでは、リーダーがはじめに意思決定を行うトップダウン型です。一方的に指示や命令が行われ、意見の吸い上げ等は別の機会、もしくは行われないこともあります。
部下のモチベーションの違い
サーバント型のリーダーは第三者を尊重し、奉仕を行うことで喜びを見出し、モチベーションとする傾向があります。つまり、自身の尽力やサポートが、メンバーやチームの成功に寄与していることが大きな成果と考えるのです。一方、支配型のリーダーは組織における地位や影響力の獲得などをモチベーションの源泉とするケースが多いと言われます。
成長の方向性
サーバントリーダーシップは、チームメンバーの成長と同じく、組織力の強化にも力を入れます。これは、サーバントリーダーがメンバーからの協力を得て業務を遂行するという特性があるからです。個人と組織の調和に重きを置くことで、将来的な成果を得ようと考えます。一方、支配型リーダーシップは個人の能力の成長を第一に考え、少数であっても精鋭であれば良いという考え方になる傾向があります。
サーバントリーダーに求められる9つの特性
傾聴力
メンバーの支援を行うためには、相手の理解が必要です。そのため、サーバントリーダーには、相手の心に寄り添いながら話を聞く「傾聴力」が求められます。傾聴を行うためには、相手の気持ちに共感することが重要であり、かつ自分は聞き役に徹しなくてはなりません。その上で、部下一人ひとりの意識や考え方を把握し、目標設定や課題解決に向けた方針を決めていくことが求められます。サーバントリーダーに求められる特性としてはもっとも重要な要素とも言えるでしょう。
共感力
傾聴の際には、相手の立場や気持ち、考え方を受け入れることが重要です。これは「共感力」という言葉で表現されます。誰もが完璧ではないことを知り、その欠点を踏まえながら共感をしようと努力する姿勢は、リーダーには欠かせません。社内での立ち位置や関係性にかかわらず、常に相手への思いやりと感謝を持って接するよう心がけることが求められます。
洞察力
相手の気持ちを慮るためには、言動や所作から細かな感情の機微を察する力が必要です。こうしたスキルを洞察力と呼びます。また、洞察すべきはメンバーの気持ちだけではありません。物事の本質を捉えたり、メンバーそれぞれの多様な価値観に気づいたりといったことも含まれます。日頃からコミュニケーションを大切にし、相手やチームのことを正しく観察できる人物こそが、サーバントリーダーに適任と言えるでしょう。
メンバーを癒す力
力強いリーダーシップでメンバーを牽引しながらも、ときにはケアできるのが優れたリーダーです。とくにサーバントリーダーは支援を行うのが特徴ですから、パフォーマンスが低下するメンバーの存在を察知し、ケアに務めるのはあるべき姿と言えるでしょう。心身ともに健康で働けているのか常に気を配りつつ、メンバー同士が互いにケアや補完し合ったりできる関係性を築けるよう促すことも大切です。
説得力
サーバントリーダーは影響力や権威を使い、メンバーを服従させるようなことはしません。指示内容への理解・納得をメンバーから得た上で、協力してもらうという形で業務遂行を目指します。そのため、言葉や意思で目的を伝え、相手から同意を得る能力(=説得力)が欠かせません。そして、この説得の積み重ねが、メンバーの信望につながるのです。
先見性
どれだけメンバーが団結していたとしても、リーダーが目標設定を誤ってしまっては成果にはつながりません。また、メンバーが納得できる指示を行うためには、根拠ある説明が必要です。その意味で、サーバントリーダーには過去の事例やデータなどを参考に、組織やプロジェクトの展望を予測する「先見性」が求められます。合わせて、今後の展望を予見できる材料にいち早く気づく先見力と、迅速に行動できるその姿勢も求められます。
概念化能力
メンバーに組織の目標やビジョンなどを理解してもらうためには、はじめにリーダー自身がそれらを概念化する必要があります。その上で、抽象的な物事を分かりやすく噛み砕き、説明できなくてはなりません。こうした能力のことを、概念化能力と呼びます。メンバーを支援し、協力を得ながら業務を進めるサーバントリーダーには欠かせない能力のひとつです。
コミュニティ形成力
サーバントリーダーシップでは、部下の本音を聞き出せる関係性の構築が重要になります。そのためには、メンバーそれぞれが互いに協力的な関係性を構築できるコミュニティづくり、ビジネス環境作りが重要です。サーバントリーダーはその重要性を理解し、コミュニティ、社内コミュニケーションの活性化にも尽力する必要があります。
育成力
サーバントリーダーはメンバーの協力で業務を遂行します。そのため、メンバーの育成はチームビルディングにおいて欠かせません。個々のメンバーの状況を把握しながら、人材としての価値やポテンシャルをコーチングによって、しっかり引き出せるよう支援することが求められます。また、メンバーの育成支援は、リーダー自身の成長にもつながります。
サーバントリーダーシップ論を学ぶ方法
社内の良い例に倣う
時代の変化によりサーバントリーダーは近年注目が集まってきた考え方ですが、新しく登場したものではありません。呼称されていないだけで、以前からサーバントリーダーシップを発揮しているという人は少なくないもの。こうした人物から学びを得るのは、非常に有効です。メンバーへの思いやりや配慮に優れた人に、日頃から心がけていることを聞き出してみましょう。
研修やセミナーに参加する
効果的に、体系的にリーダーシップを学ぶのであれば、研修などを通じて会得するのも一般的な方法です。たとえば当社では、「組織力向上研修」をはじめとした、サーバントリーダー育成にも役立つ研修を実施しています。リーダー研修の専門家による指導を受けながら、短期間で効率的にスキルを磨き、意識改革を行うのがポイントです。現代のリーダーに求められる受容力×受信力を身に着け、実践につなげたいとお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。

「サーバントリーダーシップは、これから求められるリーダーの姿」
今回は、サーバントリーダーシップについて解説を行ってきました。従来の支配型リーダーシップに比べると、柔和かつ調和を重視した態度がサーバントリーダーの特性に見えます。しかし、サーバントリーダーシップを用いて現場を管理するのには、結果として時間がかかり、高いスキルが求められることも忘れてはいけません。社内のサーバントリーダーから学びを得るのはもちろん、必要に応じて研修なども検討してみましょう。
この記事の監修者

株式会社社員教育研究所 編集部
1967年に設立した老舗の社員研修会社。自社で研修施設も保有し、新入社員から経営者まで50年以上教育を行ってきた実績がある。30万以上の修了生を輩出している管理者養成基礎コースは2021年3月に1000期を迎え、今もなお愛され続けている。この他にも様々なお客様からのご要望にお応えできるよう、オンライン研修やカスタマイズ研修、英会話、子供の教育など様々な形で研修を展開している。